100本目「アメリカン・ヒストリーX」
今年100本目の作品 仕事を半分退いてから鑑賞ペースがアップしてます。
エドワード・ノートンが、狂信的な白人至上主義者を演じ、その役作りはかなりすさまじい。マッチョボディのスキンヘッドに鉤十字のタトゥー。その口から吐かれるセリフ「野放しの不法移民200万人に30億ドルの支援、犯罪検挙に税金が4億ドル使われた。南の国境は無意味で、移民を守ろうとする政府のせいで、正直で勤勉な米国人の権利は不当に扱われている。自由の女神には『貧困を救う』と書かれているが、貧しいのはアメリカ人だ。」こうして貧しい不良白人を洗脳する、見事なプロパガンダ。「黒人男性3人にひとりは犯罪者だ。統計の数字が不平等社会の反映というのはねじ曲げられた解釈だ。」リベラルな母妹、ユダヤ系の母の恋人に言い放ち絶望させる。アジア人の自分としては、絶対に近づきたくないと心底思う。反グローバリズム、外国人排斥思想が広まるロジックはこういうものかとも。
映画は、ノートン演じるデレクが、黒人への暴行殺人で服役出所後にどうなったかがメインテーマになるのだが、そこはおよそ想定通りに進む。とても解りやすい展開なので、どんな人々が見ることを想定して作ったのだろうというのも明快だ。着地点はどうするのだと、ハラハラしながら迎えるエンディングは予想を超えていたが、自分としては、2つに分れるだろうと想定される「そこからどうするの?」というところを一瞬でよいので描いてくれたら、もっと高評価になったと思う。
先進国で広がっていると言われる政治的右傾化。経済的不安、文化的摩擦、自らの地位や将来への不安感の解消先として自身が属する集団以外の他者への攻撃という行動に繋がっているらしい。かつてアメリカ開拓期には、「アメリカはヨーロッパの白人移民が作った国だ」という理屈の下に、先住民族および非白人を敵視する映画作品も沢山あったことも思い出す。多様性を容認する21世紀型リベラリズムが躓きつつあるのは、各国の選挙結果などからもうかがい知られる。「●●ファースト」という言葉の背景がこれらだとすると、その響きにゴロテスクなものを感じてしまう。
兄デレクを盲信する弟を演じたエドワード・ファーロングは、T2のジョン・コナーでした。
アメリカン・ヒストリーX American History X 1998年アメリカ 動画配信で鑑賞
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