読書 Feed

2019年4月14日 (日)

2回目の読了「AI vs.教科書が読めない子どもたち」

最近読んだ本の中で、最もエキサイティングだったものを紹介します。1ヵ月の間に2度読みました。著者は、「東ロボくん」の愛称で知られる「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクター新井紀子氏。マスコミでの度々取り上げられ話題になった、AI技術で、東京大学の入試を突破できるかというプロジェクトを主導した方です。

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前半は、AIとは何かという本質を、東ロボくんの取組みを紹介しながら、解説していきます。世間に流布しているAIのイメージや未来予想図がいかに間違った(専門家=物理学者などの弁に於いても)ものであるか。例えば、近い将来AIが人知を越え、人類にユートピアをもたらしたり、逆に意思を持って、人類に危害を及ぼすなど、想像もできない近未来がやってくるといったことは、少なくとも我々、または次の世代くらいには絶対に起きないと断言しています。トレンドワードになった感のある「シンギュラリティ」についても、数学者としてエビデンスを示しながら、訪れないとしています。そもそも、真の意味でのAI(人工知能)はまだ出来ていない、AIとAI技術が混同されて扱われているなどについても判りやすく解説されています。

AIとは、コンピュータであり計算機なのですから、人間の活動の中で数式化できないことは守備範囲外であり、代替することはできないと説いています。つまり、人間の知的能力同等か、それ以上のことを、今のAIにさせることは不可能であることを、東大入試へのチャレンジのなかで、明らかにしていくのです。

東ロボくんのプロジェクトで、最も手こずったのが「国語」「英語」だそうです。理由は、AIに文章の意味を解させることが、非常に困難だからだそうです。コンピューターは計算機ですから、数学的論理、統計、確率に落とし込めないことを実現させる方法が、今の技術では見つかっていないからというのが理由です。人間なら誰でも解る「太郎は花子が好きだ」「太郎はカレーが好きだ」の違いを、AIは理解できない。ポピュラーになった会話するAI技術、Siri OK Googleなどは、音声認識AI技術を使い、人の問いかけを統計的に処理し、あたかも意味を解しているように振る舞わせているのだそうです。

しかしながら、「東ロボくん」の能力は、東京大学の入試合格できるまでにはなっていませんが、東京のMARCHとくくられる有名私立大学の入試を、かなりの確率で突破できるまでになっているそうです。それは、とりもなおさず、一部の知的分野に於いては、AIが人間の強力なライバルになる可能性が高いことに繋がります。人間の仕事の多くが、AIに代替される時代がそこまで来ていて、それにより仕事を奪われるひとが多数出現する可能性が高いことを指摘し、憂慮しています。前述のように、AIにも出来ないことがあるのですが、それは、多くの人にとっても苦手な分野と重なる可能性が高く、AIに代替不可能な仕事は、AIによって失職したひとに向く仕事でないわけです。

であるなら、AIが苦手な高度な読解力と常識、加えて人間らしい柔軟な判断を持てば、AI恐るるに足らずな訳ですが、問題はここからです。筆者は、「東ロボくん」プロジェクトと平行し、若者の読解力について、大規模な調査分析を行ったそうです。その結果は、中高生の多くが、教科書を理解できないレベルにある実態を明らかにします。リーディングスキルテスト(RST)と名付けられたこの調査に於いて、文章を解しない、AIと同じ間違いをする中高生が多数に登ったという結果が書かれています。問題が解けないのであれば、解き方を教えることができますが、問題そのものを読めない人に、解を教えることはできません。このことが、近い将来間違いなく訪れる、AIによる次の産業革命によって淘汰される人を、多数生み出してしまうという憂慮の根拠になっている訳です。そしてそれは、労働者にとって悲惨な社会になる可能性が高いと警告しています。

ほぼ並行して読んだ別の本では、OECD(経済協力開発機構)主催の、PIAAC:Programme for the International Assessment of Adult Competencies.(国際成人力調査)という、成人向けの「知識社会に適応能力」測定結果でも、日本人全体の3割が、簡単な文章の読解力が欠如しているという結果を紹介しています。つまり、子どもの頃のスキルは、大人になっても同じにである(教科書の読めない子どもは、文章を解さない大人になる)ことを示しています。

著者は、こういった状況を改善し、AIと共存できる社会を目指すため「中学1年生全員にRSTを無償提供し、読解の偏りや不足を科学的に診断し、中学卒業時に全員が教科書を読めるようにする」という取組みをされているそうです。そして、その資金としてこの本の印税を、RSTを提供する法人に全額寄付するとしています。あとがきに書かれたこの一文には、感動を覚えます。

断片的に伝えられる情報や、偏った情報、身近にあるデバイスで接せられるテクノロジーなどで、何となく分ったような、そうでないようなもやもやした感覚で捉えがちなAIについて、専門知識を持たない読者でも、その本質を知ることが出来ること。AIが変えるであろう、近未来の社会について、私たちがどう対応すべきか標となる情報を得られることなど、好奇心を刺激されること間違いなしです。是非一度手にとってお読みになることをお勧めします。それが、「教科書を読めない子ども」を少しでも減らす一助になることにも繋がりますから。

追記:この春から、私立高校の国語教員になった息子にも一冊プレゼントしましたので、酒井家では、2冊購入です(^^)

2019年1月24日 (木)

読書&憂鬱

今年最初に手にした本です。私は、来年還暦を迎えますので、気になるのはやはり老後の生活設計。こればかりは、事前の心構えと準備が必要なので、必然的にいろいろ知識を吸収せねばと言う気持ちになります。
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たまたま、新聞の広告で見つけ、ネット書店から取り寄せて読んでみることにしました。主に、老後の生活をお金の面に着目し、余裕を持った生活を送るための解説本という位置づけです。結論から申しますと、およそ既に知っている内容が多く、為になる部分は少なかったです。大枠は、貴重な老後資金を、高リスクな運用や保険などに使わず、税制や公的制度、社会保障の仕組みなどを熟知し、堅実に備えましょうというものです。要するに普通のことです。ただ、気になったのは、その制度が、未来永劫維持されるという保証がないことに触れているのが、後書きのみだということです。 まあ、現況を踏まえ、どう対処すべきか書いた本なので、そのあたりは、別の書物に譲るべきテーマなのかも知れませんけど。

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グラフのとおり、私が後期高齢者になる2035年は、人口の3人に1人が65歳以上、労働力人口は、現在よりマイナス15%。いったい誰が、今の社会保障を支えるのかと考えると、公的な制度に頼り切るのは、若干危なそうです。

公的保障を考えるとき、政権与党は、ついこの間まで、100年安心とか言っていたような気がしますが、どうなったのでしょうね。最近は最低70歳まで働けと言っているように見受けられますが、仕事を続けたい人、リタイアしたい人、いろいろでしょうから、選択可能な社会が望ましいと思います。社会保障の先行き不安を考えるとき、高齢化社会の到来は、ずっと前から解っていたはずなので、政治と行政担当者の責任は重いと思います。こういった状況を鑑みれば、人口減少社会に於いて、年金、介護、医療サービスの質が、将来、今より上がるとは思えませんので、自助が求められる時代になるのは、間違いないでしょう。

自分で事業を営んでいる者とすれば、雇い主に定年退職を迫られることはありませんから、自分が望みさえすれば、仕事はずっと続けられます、つまり、老後はなくなるわけです。ただ、小規模事業主は、大方、自由になる時間が少ないのが公約数と思いますので、ある程度歳を重ねた後に、自分の時間と仕事をうまく両立できるかという観点も問題です。さて。

2018年10月13日 (土)

読了「ザ・ワーク・オブ・ネーションズ」

愛読している作家、橘玲氏の書物の中で頻繁に引用される書籍のオリジナルを読んでみました。著者は、米国の経済学者で、ビル・クリントン政権の労働長官を務めた、ロバート・B・ライシュ 発刊されたのは1991年なので随分昔ですが、その内容は現在の格差社会到来を予言する、先見性に充ちた内容です。

P1010081●8ポイント 450ページ超の重量級でした。

アメリカの経済史から始まり、1990年当時の状況解説と、その後訪れる21世紀の労働、雇用環境を予想し、対処の処方箋までに言及しています。

概略は、21世紀のアメリカ人は、スペシャリスト(知識労働)とマックジョブ(マクドナルトのように、マニュアル化された単純労働)に二極化される。本の中では、●ルーチンワーカー ●インパーソン(対人)サービス ●シンボリックアナリスト の3パターンに分けています。

第二次大戦後の成長期においては、日米どちらでも、工場で熟練を積んだ労働者が真面目に勤務すると、マイホームを買って、複数人の子どもに高等教育を受けさせることができた。しかし、20世紀の後半に始まるグローバリゼーションによって、人、モノ、金が自由に行き来するようになると、単純労働の製造業は人件費の安い新興国に移動してしまう。アメリカ国内から仕事の現場を移せない(国際取引できない)、対人サービスの仕事については、低賃金で働く移民に取って代わられる。この内外「ふたつの国際化」によって、先進国労働者は、仕事を失うことになるというものです。一方、知的労働を担う人々の報酬は、青天井となり、経済格差が固定されていくだろうという予見です。今の状況を、見事に言い当てていると思います。

であるなら、打開策として、単純労働で収入を得ていた階層の人々は、自己投資をしてクリエイティブクラスを目指すべきと言う処方箋を提示しています。そのためには、政府は教育予算を惜しまず、多くの国民が、知識社会に対応できるよう対処すべきとしています。

この頃には、この対処法と政策は有効と思われ、いずれアメリカは高度に知識化を遂げた国民のちからで、世界をリードする知識大国になるはずでした。確かに、数々のイノベーションを生んで、テクノロジーの最先端を行く国になっていますが、皮肉なことに、それを担っているかなりの部分は、自分の能力を生かすため、世界中から仕事を求めて集まった人々が占めているのです。そして、トランプ大統領誕生からも判るように、相変わらず仕事を奪われた、かつての中間層が今でも存在し、知識社会に対応できていないという現実があります。「我々に仕事をよこせ」と叫ぶ支持者のため、大統領は保護主義政策を進めています。

有効と思われた処方箋が機能しなかったのには、エビデンスに裏付けられた理由があるのですが、それは別の書物に譲ることにします。

著者のライシュは一昨年、これからの資本主義構築に向けての提言となる内容の本を出していますので、いずれそちらも読んでみたいと思います。

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