なんちゃって映画感想文 Feed

2026年3月14日 (土)

「レンタル・ファミリー」感想文

Photo_3「非の打ちどころがない」とは、作品の出来栄えが非常に優れていることを高く評価する際に用いられる慣用句です。今風にいえば「まじ完璧!」と言ったところでしょうか。年に二度ほど開いている、SNSで繋がった映画同好の友人たちと催すオフ会。毎回その前に、新作映画を1本鑑賞するというのが恒例行事となっていて、今回は東京のシネコンで話題作をチョイスしました。「レンタル・ファミリー」(英題:Rental Family)今も上映されていて、ロングランの気配です。この作品が「非の打ちどころがない」のでした。配給は、良作をたくさん輩出しているサーチライトピクチャー。オープニングロゴは、あのスターウォーズ始まりのファンファーレと同じです。ハリウッドのスタジオですが、大予算のブロックバスター(超大作)よりも、中・低予算のインディペンデント系の良作や、エッジの効いた作品を得意としています。撮ったのは、日本人の女性監督「HIKARI」。主役はアメリカ人ですが、撮られたのはほぼ東京周辺と一部地方。本編だけ見れば、外国映画とは思わないでしょう。

東京の今を鮮やかに描く、エスタブリッシング・ショット。高精細なデジタル映像技術を駆使したであろう風景は、東京ってこんなに綺麗だったのか・・と思わせます。主人公が住む古い集合住宅と、向かいにある同じような住居。明示されてはいませんが、物語の流れで小田急線下北沢あたりと推察されるこれらの夜景、碁盤状に並んだ窓の色も美しいです。

小津映画が源流と言われる「ピローショット(Pillow Shot)」。場面転換に挟まれる静的映像。東京の街並み、アパートの室内、廊下や生活空間などは、空間がドラマを語る手法として今や映画作りの常道。孤独社会、巨大都市中の疎外などを暗示する効果。しかし、余白が長すぎないのは、今の鑑賞者、特に国際市場を意識したものなのだろうと推察します。

主人公フィリップが、「レンタルファミリー」を仕事にするt取っ掛かりとなるエピソードが「つかみ」として非常によくできていて舌を巻きました。特に、「結婚披露宴」は、ショートストーリとして完成されていて、何かのオムニバス作品の一部として見ても成り立つ印象です。

全体の文法は、物語性より人間関係の空気を描き、説明を省くことで鑑賞者の共感を呼び起こす作りです。所謂「エモさ」は薄いですが、日本人の琴線に触れるという表現がぴったりかと。メインになるエピソードは、「みあ」という少女の父親役と、老齢の元大俳優「長谷川喜久雄」を取材する記者役。この2系統を並列に進めながら、その他、あるときは推し活の代理、ビデオゲームのパートナ等々いくつかのお得意様仕事の掛け持ち風景を織り交ぜる緩急付けた編集が秀逸です。

演技者としては、主役のレンダン・フレイザー。落ち目俳優の役がぴったり。巨漢だけど、柔らかさ暖かさ戸惑いなどが滲む表情がそれをプラスに変えています。レンタルファミリー主催者平岳大。自らが編み出した仕事への意義と価値に自信とを持つ。冷徹な経営者に人間的な魅力を兼ね備えた演技が良い。レンタルファミリーに所属する山本真理。主役と会社と経営者フィリップとの間で存在感。気の強さと少女のナイーブさを併せ持つもう一人の主役、ゴーマン シャノン眞陽の愛らしさ。そして最高なのは、認知症気味の元大俳優を演じた柄本明。もはや名人芸!(死んだ後も含めてw)

喜怒哀楽をバランスよくちりばめ、よく練られたシナリオ。セオリーを外さない構成と編集テクニック。人の繋がりをベースを置く深みのある人物描写。どれをとっても完璧レベルです。鑑賞後には、作りてからの、こころの柔らかいところにそっと触れられるような優しい感動が得られます。エッセンスを短くまとめた動画などでは決して見てはいけない味わい深い作品でした。見た人の大多数が高評価に挙げるであろうことは間違いないです。

しかし、私個人が好きかというと、意外とそうでもないという印象だったのが映画の面白いところ。高評価で、人には勧めたいけどそんなに好みではない。いろいろな点で、普通じゃない作品じゃないと満足度が低い自分に気づいた(うすうす解ってたけど)として締めくくります。

レンタル・ファミリーRental Family 2025年製作 アメリカ


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2026年2月 8日 (日)

映画3題、AIとのチャット

思い立って、過去作を続けて3本見ました。1950年代後半、当時の親米独裁政権を倒した「キューバ革命」の英雄チェ・ゲバラ。その志と生き方を見出したの若き日の旅、革命家として政権を倒すまでの闘争と、政権から離脱し再び革命家として歩み死を迎えるまでをドキュメンタリー風に撮った連作です。

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生前のゲバラにスポットが当たった時代私は小学生で、政治や世界のパワーバランスなどを全く知る由もなく、彼の半生を知るのは随分大人になってからですが、当時同じ時代を生き、反権力闘争に身を投じた経験がある方々には、まぶしいカリスマ性と成功体験をもたらしたのは想像に難くありません。映画をなぞってみるだけで、平和で繫栄した日本に生まれて過ごしてきた私の胸も熱くなりました。2部作が公開されたころ言われたのが、「実在人物をモデルに映画を作る場合、本人より俳優のほうが美形なのが普通だが、今作は逆なのが笑える」 主演のデル・トロは個性の立つ良い俳優と思いますが、確かに見てくれは本人が上ですw

もともと、アメリカの至近にあり、親米バティスタ政権を倒したキューバは、アメリカにとって「裏庭の敵」。やがてソ連と接近し社会主義化することで長期に渡って対立してきました。双方の指導者交代を機に一時的に改善した関係が、トランプ政権の誕生で再び激しく対立しているのは、最近のニュースで知るところです。そんなキューバについて、革命という視点からみたとき、どのような評価をされているのか興味を持ってAIと対話してみました。

私:革命後のキューバについて 革命の成功は持続しているか

ChatGPT(以下C):結論から言うと、キューバ革命は「政権の持続」という意味では成功を維持しているが、「社会モデルの成功」という意味では深刻に揺らいでいる、という評価になります。

・カストロ政権は60年以上存続 ・一党制・社会主義体制は維持 ・米国の強い圧力下でも体制崩壊せず

C:社会政策の成果 教育、医療の充実、経済格差の抑制 しかし、経済の失敗で持続が危うい 今のキューバは「革命後国家」ではなく「革命後遺症国家」 革命は「勝ったまま、失敗した」

冷静な回答が得られました。様々なメディアで見聞きしてきた状況が、うまくまとめられていてとても腑に落ちました。映画に絡めて再び問いました。

私:チェ・ゲバラが健在で、再びキューバの指導者となっていたら現状は変わったか

C:チェ・ゲバラが健在で、再びキューバの指導者になっていたとしても、現状は「良くはならない」。むしろ「より早く・より深く行き詰まった」可能性が高い。理由は、彼が”あまりに革命的すぎた”からです。

私はこの一文に何だか再び胸が熱くなりました。

そして、いくつかの理由付けのあと続くまとめ文はこうありました。映画を見終えた今、とても刺さりました。

●チェ・ゲバラが生きて指導者になっていたら、キューバは「今より尊敬され、今より貧しく、今より自由が少ない国」になっていた可能性が高い。●だからこそ、彼は「死んだままで最強」だった

このあと、彼のような純化型理想主義者が統治に向かない理由、失敗した国家が尊敬される理由まで踏み込んで対話しましたが、選挙投票日の今日、何だか考えさせられる別の余韻が残りました。


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2026年1月 6日 (火)

輝け2025年マイベスト映画

ということで、お正月気分もほどほど抜けた今頃になって、昨年を振り返ってみたりして。動画配信サブスク偏重のせいで、劇場鑑賞は僅か20本に止まりました。なかで気に入ったのがこれらです。左上から、ブータン、ラトビア、ブラジル・フランス、アメリカ、インド、ベルギー・フランス、フランスと国際色豊かなセレクトとなりました。スーパーマン以外は、シネコンでは見られなかったかもなので、頑張ってる小劇場に感謝であります。右下端は、家内の大プッシュで入れました。映画仲間と集うとき、頻繁に行っていた、新宿ミニシアター「シネマ・カリテ」がまもなく閉館してしまうことになり、悲しんでいる26年初頭であります。これ以上減らないでね。

2025


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2025年12月22日 (月)

映画レビュー「ザ・スクエア 思いやりの聖域」

2017年パルムドール受賞作品を動画配信で見ました。これ実は、公開当時に劇場鑑賞しています。その時は面白いと感じながらも、これがパルムドールね~と、あまり自分に刺さる感じではなかったですが、今回じっくり見直して、その面白さを深く実感した次第です。2017年のスウェーデン作品です。

現代美術館チーフキュレーターである主人公の周辺に起きる出来事を追いながら、北欧エスタブリッシュメント・リベラルの偽善を剥ぎ取り、人の本性を曝すという、リューベン・オストルンド監督得意の語り口が痛快すぎて、笑ったり、もやもやしたり、目を背けたくなったりと、大人の感情を鋭くえぐる作品です。

ここで言う「北欧エスタブリッシュメント」は、通常使われる、英米の支配的階級層を指すのと少し違って、教養がありリベラルで、弱者に理解があると自認している文化・知識エリート、今流行りの言葉で言えば「意識高い」人々と理解するのが正しいようです。

そのとおり、舞台となる豪奢な王立現代美術館の威風堂々とした姿は、権威の象徴のように見えます。そこの花型キュレーター、クリスティアン。すらりとしたハンサム。テスラEVに乗り、知的で洗練された立ち居振る舞いの彼が打ち出した新しい展示企画が、作品タイトルになっている“ザ・スクエア”。石畳に正方形の枠が作られ、展示プレートには「『ザ・スクエア』は、信頼と思いやりの聖域です。この中では、誰もが平等の権利と義務を持ちます」と書かれています。リベラルをベースとした普遍の価値観です。素晴しい!

ある日、クリスティアンは、出勤途中にスマホと財布を盗まれます。それを取り返そうする行動から起きる騒動がストーリーの基調。その同じ時間軸上で、彼の周辺のエピソードを交えて、「ザ・スクエア」的価値観と、現実との齟齬をちりばめて行くのです。

そもそも、現代美術という、およそ普通の人には理解できなさそうな芸術を扱う王立の美術館って、高尚な文化と知性の象徴です。多くが、日用品だったり、建築や工業資材だったり、天然の水や岩石だったり、時には廃棄物だったりを並べたり組み上げたりして、深いメッセージを込めた芸術作品だとするものを、どれくらいのひとがその本質を理解できるのか。美術館とその周辺にいる人々に、「私たちは、それが解るんだもんね~」と、言わば上からの目線で言われているような気分でいるのは、私だけではないでしょう。(凡人のひがみかも知れないけど)

描かれる数々のエピソードは、この上ない批判精神に溢れ、ときに観客に対して「自分ならどうするか」を突きつけてきます。特に、美術館主催で開かれるディナーパーティで催された企画、会場に現れるマッチョな半裸の男が扮する「ゴリラマン」。招待客達はその存在を、独特のパフォーマーと受け入れ、ユーモアと寛容を持って受け入れます。しかし、「ゴリラマン」の行動は次第にエスカレートし、野生のように振る舞い始めます。愛嬌ある行動→咆哮、威嚇、身体接触。観客達は戸惑い始め、感情を制御しようとする知性や教養と、不快や恐怖という本能との間で立ち往生します。見事なのは、見ている観客にもたらす当事者感覚です。女性が被害者になりそうになるに至って、座視していた男達が、排除のために行動を起こすことで満たされる安堵感。私たちが、作り手の手玉に取られる瞬間です。

もう一点大事な視点があります。クリスティアンがスマホと財布を取り戻すために起こす行動によって、ある少年と接点を持ちます。少しくせのある黒髪の彼は、おそらく中東からの移民と推察されます。(ネイティブの人なら、発音の違いも解るかも)泥棒扱いされたせいで、親から罰を受け憤慨している彼を、厄介者として排除しようとするクリスティアン。近年、ヨーロッパ各地で問題になっている移民政策についての現実も目にすることになります。“ザ・スクエア”主催者が、貧しい移民に接する態度はそれでよいのですかと。

クリスティアンの身辺に起きる諸問題は、結局未解決のまま、非常にもやもやしたままエンディングを迎えます。娘のチアコンテストで耳にしたコーチのセリフで、少しだけこころを入れ替えた彼は、これからどうなるのでしょう。作品冒頭から、折々登場するホームレスで物乞いの人々。主人公が、彼ら彼女等に接する態度の明らかな変化にも、示唆があるのですね。

人間観察、社会学的視点からのアプローチ(監督談)、風刺や皮肉満々載の今作。違う視点でひとの本質を鋭く突いた次作「逆転のトライアングル」と比較してみると、より楽しめると思います。こちらも大オススメです。逆転のトライアングルレビュー

ザ・スクエア 思いやりの聖域 (The Square)2017年 スウェーデン

1凡人には難解な美術館展示作品 終盤のネタにされます

4大人のオトコを爆笑させるシニカルなシーン

8いかにもな広告代理店の二人。昔、日本にもこの業界人をネタにしたぶっ飛んだ漫画がありました。

6ゴリラマンと招待客。このあとエスカレート。

5猛烈抗議する少年。最近観た映画キャラクターの中でも出色。

7ゴミの中から何かを探そうとするクリスティアン。


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2025年10月20日 (月)

映画の集い

Facebookで知り合った同好の友人達と、定期的に開催しているオフ会。先日半年ぶりに開催しました。メンバーのお宅に集合し、長時間に渡り、ひたすら映画の話をするという至福の時間です。Facebookに投稿した内容からコピペします。

昨夜は恒例となっている映画仲間の集まりでした。今回の宿題テーマは「犯罪」。映画の題材になりやすいテーマでしたが、メンバー各人が勧める、軽いの重いの、恐いの笑えるの、リアルなの荒唐無稽なの等々バラエティ豊かな作品が披露されました。動画配信されているものには早速チェックをいれて、今後順番に見ていくことにします。今回のプレゼンで、動画配信サービスは「U-NEXT」最強という説が有力になったため、これから登録者が数人増えることになりそうです。

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昨日、映画仲間集まりの前に劇場鑑賞した新作が素晴しかったので紹介。ベルギー33歳の新鋭監督が撮った、クライムアクションスリラー。「ナイトコール」 主人公普通の若者が巻き込まれる殺人犯罪絡みの現金争奪戦。息もつかせぬ展開、抜群のカメラワーク、テンポの緩急バランスが秀逸で映像音共に素晴しい。ブリュッセルの美しい街並みと石畳の風景にも目を奪われます。文句付けようのないアクションエンタメ。長台詞が少ないのも、字幕鑑賞者にはありがたく、1時間半ほどと、アクションものにはちょうど良い長さなのも大変好感度大。犯罪の背景や人物像には深入りせずアクションにフォーカス絞ったのも、世界で売るには良い選択と思います。一緒に見た友人共に大絶賛しました。

ナイトコール La nuit se traîne (夜は長引く)2024年 ベルギー・フランス合作

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2025年8月25日 (月)

100本目「アメリカン・ヒストリーX」

今年100本目の作品 仕事を半分退いてから鑑賞ペースがアップしてます。 

エドワード・ノートンが、狂信的な白人至上主義者を演じ、その役作りはかなりすさまじい。マッチョボディのスキンヘッドに鉤十字のタトゥー。その口から吐かれるセリフ「野放しの不法移民200万人に30億ドルの支援、犯罪検挙に税金が4億ドル使われた。南の国境は無意味で、移民を守ろうとする政府のせいで、正直で勤勉な米国人の権利は不当に扱われている。自由の女神には『貧困を救う』と書かれているが、貧しいのはアメリカ人だ。」こうして貧しい不良白人を洗脳する、見事なプロパガンダ。「黒人男性3人にひとりは犯罪者だ。統計の数字が不平等社会の反映というのはねじ曲げられた解釈だ。」リベラルな母妹、ユダヤ系の母の恋人に言い放ち絶望させる。アジア人の自分としては、絶対に近づきたくないと心底思う。反グローバリズム、外国人排斥思想が広まるロジックはこういうものかとも。

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映画は、ノートン演じるデレクが、黒人への暴行殺人で服役出所後にどうなったかがメインテーマになるのだが、そこはおよそ想定通りに進む。とても解りやすい展開なので、どんな人々が見ることを想定して作ったのだろうというのも明快だ。着地点はどうするのだと、ハラハラしながら迎えるエンディングは予想を超えていたが、自分としては、2つに分れるだろうと想定される「そこからどうするの?」というところを一瞬でよいので描いてくれたら、もっと高評価になったと思う。

先進国で広がっていると言われる政治的右傾化。経済的不安、文化的摩擦、自らの地位や将来への不安感の解消先として自身が属する集団以外の他者への攻撃という行動に繋がっているらしい。かつてアメリカ開拓期には、「アメリカはヨーロッパの白人移民が作った国だ」という理屈の下に、先住民族および非白人を敵視する映画作品も沢山あったことも思い出す。多様性を容認する21世紀型リベラリズムが躓きつつあるのは、各国の選挙結果などからもうかがい知られる。「●●ファースト」という言葉の背景がこれらだとすると、その響きにゴロテスクなものを感じてしまう。

兄デレクを盲信する弟を演じたエドワード・ファーロングは、T2のジョン・コナーでした。

アメリカン・ヒストリーX American History X 1998年アメリカ 動画配信で鑑賞


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2025年8月 1日 (金)

新作映画「スーパーマン」レビュー

スーパーマンの映画が好きだ。1930年代に誕生し、「正しさ」を体現する象徴として描かれ続けるヒーロー像には無条件に魅了される。何度もリーブートされてきたが、その都度劇場に足を運んでしまう。今回の新作も、公開翌日とその2週間後に二度鑑賞した。初期の実写映画は、まだ生まれていないので見ていないけど、最初に体験したのは1978年のクリストファー・リーブ版「Superman The Movie」。翌年日本公開されたときが大学一年生の夏、横須賀秋谷海岸での合宿地に向かう途中、乗換えの国鉄川崎駅東口の映画館で。アメリカでのヒット情報を見聞きして、絶対観たいと強くこころに誓っていた。前年に観た、スターウォーズの初作で、ハリウッドVFXの凄さを目の当たりにして、その期待度は膨れ上がるばかりだった。その映画作品は、大学入学したての無垢な18歳の青年(私のことだけど)には、最上級の驚きと感動を与えてくれたのであります。当時のキヤッチコピーは「あなたも空を翔べる!」。 偽りなく、劇場を出てくるときの私は右手のこぶしを突き上げ、道路を渡ろうとしたときに近づいてきた自動車を、手で押し戻したい衝動にかられる程だった。クリストファー・リーブは、その容姿と体格、役作りすべてがスーパーマンそのもので、おそらく同世代のファンが抱くスーパーマンのイメージは、彼のそれだろうと思う。

Superman_l_2最新のリブート版では、かつて演じたリーブから3代目になる新しいスーパーマン。春先に見た予告映像を見て、これまでと同じように「絶対見る!」と強く決意し、公開翌日の土曜日、新宿歌舞伎町の巨大シネコンで、いつも集う映画仲間と一緒に鑑賞。結果は・・「楽しい!楽しい!楽しい!!!」。エンドロールのあと拍手喝さいを差し上げました。(満員席の後ろのほうから、少しだけ追随してくれた人たちも。)

どこが楽しかったかこれから書くが、ネタバレを含むでこれから見ようと思っている人はお気をつけを。あるいは、スーパーマンがキライなひとは読まないように、あるいは、期待外れと思ったひとからの反撃には対処しませんのであらかじめご了承を。

新しいスーパーマンの外連味ないキャラクター。愚直に見えるほどひたすら「正しいことをする」という私たちが知っているヒーロー像は見ていて嬉しくなる。期待したとおりの描き方だ。象徴的なのは、物語の主な舞台大都市メトロポリスがディザスターに見舞われたとき、少女、夫人から小動物に至るまで、その能力、無限じゃなかろうかと思われるパワーと目にも留まらぬ素早さを駆使して次々救い続ける光景だ。劇場内は「お~!」というざわめきが聞こえた(気がする)。

スーパーヒーロー誕生のオリジンストーリーは、シリーズ化されるか否かに関わらず第一作目の冒頭で語られることが多いが、今作は数行のテロップで説明されるだけに過ぎない。何故って、スーパーマンの生い立ちとエピソード、ヒーローとして活躍するまでの課程はみんな知っているよね・・というのを前提にしている。これって意表を突かれたがかなり好感度大だ。そして最初のシークエンスは、スーパーマンが初めて負けて、南極の氷の要塞に逃げ帰るというところで始まる。雪原に落下し弱りまくって自力で戻れない彼は、口笛を吹き、赤いマントを纏った犬を喚び助けを請う。象徴的な場面だ。ヒーローストーリー定石は、1)その無敵の力を披露し敵を叩きのめす。2)その力を超える新たな敵や能力が現れて苦戦する。3)何らかの対処策を編み出したり得たりして逆転勝利する・・・だよね。1)を省いたところが、ジェームズ・ガン監督兼脚本の秀逸さだと思う。助けにくる愛犬クリプトを、飼い主にあまり忠実とは言えないややダメ犬にしている(そこがメチャかわいいんだけど)ところも、この映画の重要なキーだったことがやがて解る。

Photo_2物語誕生からずっと変わらぬ宿敵、悪の天才科学者レックス・ルーサー。今となっては、ヒーローストーリーに於けるスーパーヴィランが人間という設定が生み出されることは、ポリコレ前提の下で少なくなった感があるが、伝統的なお話に於いては敵役のキャラや動機づけを少し修正することで継続させているのかも。(バットマンなんかも同じ)70年代80年代には、あのジーン・ハックマンが、その後ケヴィン・スペイシーが、近作ではジェシー・アイゼンバーグがそれぞれ演じて、こんちくしょう感!を見事に醸していた。今回はニコラス・ホルト。近年大活躍だそうだが私はあまり認識してなくて、一度目を見終えたあと調べてひっくり返った。(2002年公開アバウト・ア・ボーイより)そのレックスについてのキャラクター設定をAIに問うたところ、なかなか納得できる答えが返ってきた。25年版。単純な悪役ではなく、独自の信念と歪んだ正義感 ●人類の可能性を阻害する存在としてのスーパーマンへの憎悪。●嫉妬と劣等感 ●「人間」という存在へのこだわり ハックマンやスペイシー版では、古典的な悪役 ●金銭欲と権力欲 ●知性へのプライド ●個人的なライバル意識 だと。双方比べてみると重なる部分もあるが、より深みを加えた人物像としてアップグレードしていると見たがどうだろう。その新しいレックスが作り出したポケット・ユニバースという概念も面白い。スーパーマンの驚異的なパワーはニュートン力学的凄さと思うが、それを封じ込めるのは高次元のテクノロジーが必要という設定に辿り着いたか。私の文系脳には到底理解できないが、量子重力理論とワームホールとか、ブレーンワールド理論とか、何しろ皆目イメージができそうにない理屈を映像にしてくれるというのは、SF(っぽい)作品の有りがたいところだ。異次元空間の中で繰り広げられる活劇には、私の拙い科学的知識に於いても、「ちょっと変!」と思われるところもあるが、そこはエンタメと割り切る。

愛犬(?)クリプトの存在を含め、今作の大事なコンセプトは、スーパーマンは孤独なヒーローではないというところか。いくら無限の力を持つスーパーマンとて、同じ時間に別の場所で起きる危機には対処できない。解決したのが別のヒーロー群。前作までのスナイダー版ジャスティス・リーグもヒーロー集団だが、今作ではかなり趣を変えて登場している。個性的で全くまとまっていない3人「ジャスティス・ギャング」。原作DCコミック愛読者にはおなじみかもしれないが、私には初見の地球人型ヒーロー達。主に活躍する頭脳派ミスター・テリフィックがカッコ良く、中盤からの活躍シーンは、その秀逸過ぎるカメラワークを筆頭に本作最大の見どころのひとつと感じた。スーパーマンと彼らの距離感も絶妙で、そこはかとないユーモアセンスが見て取れるところも好感度上げている。そして、スーパーマン大逆転の巻きとなる大活躍するクリプトも大切な「仲間」としてポジションしている訳だ。作り手の、大事なメッセージを感じる。もうひとつ重要な点は、レックス・ルーサーがこだわるスーパーマン=異星人という事実と彼が発見し復元した父ジョー・エルのメッセージだ。確かに超人としてのパワーは、クリプトン星人であることに由来するのだが、自身は、地球で育った「人間」としてのアイデンティティを持ち、感情や道徳心を発する姿に観客は強い共感を覚えるはずだ。そんなところを、主人公の口で語らせるのは通常映画的には稚拙でダサいとされるが、ことスーパーマンにはそう思わせないところが上手い。一方、ルーサーの手下エンジニアによって「復元」された父親からのメッセージは、これまでの常識を覆す衝撃的な内容なのだが、それを知ったスーパーマン=カル・エルが悩み葛藤し、自らの進むべき道を選ぶという要素が加わったことで、物語により深みが増しているのだ。


そしてそして、最もこころときめかせてくれたのが再び使われたジョン・ウィリアムズのテーマ。アレンジされたとは言え、あの印象的なフレーズを聞いたときの感動は、もう参りました~と無条件降伏状態。予告映像で「絶対見る!」決意のベースには、あのテーマを聞いたからというひとも多いのではないだろうか。鑑賞後、ネット動画で探してオリジナルを何度か聞いたのは言うまでも無い。市民とスーパーマンの一体感を描くシーンで、効果的に使われるのがエモく、ジーンとさせてくれる。映像に付く音楽は、鑑賞者との一体感や没入感を造り出す効果があるのは知られるところだが、今作ほど効果的なのは希かとも思う。願わくは、エンドロールのバックには、オリジナルに近い音源を使ってくれたら、最後の拍手がもっと多くなったのではなかろうかとも。

Superman • Main Theme • John Williams
YouTube: Superman • Main Theme • John Williams

他にも、過去作に比べ短めにさらりと描かれるケント一家の親子愛は、穏やかだけど強い。リーブ版にちょっと似ているキャスティング、ロイス・レイン。社会的には自立した女性そのものだが、強者の前には無力だったのが、今作は少し違う。ここにも時代の後押しが効いているか。新聞社での同僚オルセンとレックスの彼女でおバカなキャライヴの存在も重要なキーとして描き、ジェームズ・ガン監督が、「仲間」含む群像を調和を持って仕上げる名手である証拠を見た。

等々、等々、気に入ったところを挙げていくと切りがないが、心の中の永久保存版になること間違い無しとして長いレビューを終える。

25年 Superman 

2025年6月10日 (火)

Facebookのノート(note)を探して

このブログにもときどき下手な映画感想文を書き記したりしていますが、以前は、感想文専用の別ブログを書き、同じ内容をFacebookのノートという機能を使って、フレンドの皆さんに読んでもらっていたことがありました。ブログは、不特定多数の目に触れるチャンスがありますが、よっぽど力を入れないと読者を獲得することが難しく、且つ、誰が目にしてくれたかを知ることは難しいです。SNSであるFacebookは、同じ趣味の仲間も大勢いますし、リーチの分析や獲得した「いいね」の数で、反応が伝わりやすいので、やりがいにも繋がるのですね。10数年前には、感想文書きにも熱があり、資料を調べたり、自分なりの視点を盛り込もうとしたり、下手ながら時間を割いていろいろチャレンジしたものでした。しかし、だんだんと仕事に忙殺される時間が長くなり、映画を見ても長い文章を書くことがなくなり、ブログの更新は遠ざかり、同時にFacebookのノートに書き込むことも無くなりました。(現在フェイスブックで運用されているノートとは別物です)今回、訳あって、昔の感想文を読み直そうとしたところ、ブログは既に運用を止めていて、サポート期間は先月末で終了というタッチの差でチャンスを逃しました。それならFacebookのノートを探そう・・としましたが、こちらも既にメニューから無くなっていました。何年か前には割と簡単に過去ログを呼び出すことができたので、無くなることはないのだと高をくくっていましたが、今回アプローチしたら、簡単には見つからなくなっていることに気付きました。大変です。さあ、どうしよう・・「こういうときはネット検索だよ」ということで情報収集すると、最近の記事で、自分の投稿についてはログをデータとして呼び出すことが出来ることが解りました。ただ、SNSは頻繁に仕様が変わるので、ちょっと古い情報だと「今」にあ当てはまらないことが多く、今回もちょっと難儀しました。何とか辿り着くことができましたので、私と同じ悩みをお持ちの方への指標になればと、手順について記しておきたいと思います。ご参考にしていただけると幸いです。

1)右上プロフ写真をクリック 設定とプライバシー→設定 と進む

2

2)必要な設定を見つける窓に「プロフィール情報をダウンロード」と入力

4

3)個人データをダウンロード画面で、情報をダウンロードまたは転送を選択。

5

4)次の画面で、フェイスブックを選択。どの程度の情報が必要ですか?と問われるので、「特定タイプの情報」を選ぶ。

7

5)すべて見る→その他のアクティビティにチェック→次へ

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6)次画面で、「デバイスにダウンロード」を選ぶ。期間を聞かれるので、必要な設定をする。

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7)ファイル作成が始まるので、終了の知らせを待つ。

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8)ブラウザのダウンロード履歴より、zip形式のファイルをダウンロードして展開。一覧からノートを選ぶと、HTMLファイルをブラウザ等で閲覧できます。作成時のレイアウトは崩れていますが、テキストの内容は残っていました。やれやれ。

14

9)こんな感じで、ずらっと閲覧できます。私の最後の更新は。2014年7月なので、10年以上経っていました。無くなって当然ですね~(汗)

Her


0120

2025年5月23日 (金)

小劇場で2作 「Flow」「HERE」

昨日は小劇場で2本鑑賞しました。どちらも、今まで見たことの無い、チャレンジングな作りの作品で、見応えありました。

Flow2_3
一本目はアニメーション作品「Flow」。ファンタジックなロードムービー。作ったのは、ラトビアの気鋭監督。といっても、世界地図ですぐ指し示すことができるひとは少数でしょう。私も同じ。同じ国で作られた映画作品も見たことありません。ポスター中央の黒猫が主人公で、他に登場するのは数種の動物のみ。日本のアニメやディズニーアニメのようにひとの言葉を話したりしないので、全編セリフ無しです。設定説明もゼロ。だから、ずっと想像力を求められます。終始脳ミソフル回転なのであります。しかし、時間と共にと動物たちそれぞれのキャラクターが見えてくるのに気付きます。素晴しい描写力です。アニメをあまり見ないのでエラソーには語れないのですが、CGのビジュアルとしては、風景描写及び色づかい、光の使い方が大変美しい。そして、主役の猫の動きがスーパーリアルで、おそらく日常的に猫の生態に接していらっしゃる方なら、私よりもっと驚かれると思います。アメリカ製CGのように、毛並みまで再現している訳ではないですが、それは何のネガティブでもありません。物語は、大洪水のあと人間がいなくなった世界で、生き残るため旅立つ主人公猫と、道連れとなる数種の動物たちが遭遇する出来事を描くもの。意思を通わせられない違う種の動物たちが、運命を共にする旅路でどのように振る舞うのかが見どころです。ふと、ノアの方舟か、バベルの塔の物語がよぎりました。各国のアニメ映画賞を多く受賞しているのも納得。大人(だけ)が鑑賞を許されるアニメ作品としてオススメします。

「Flow」 原題Straume 2024年 ラトビア・フランス・ベルギー合作

Here_3
二本目はゼメキス監督とトム・ハンクスが組んだ。こちらもチャレンジングなファンタジック作品「HERE」。アメリカのある家のリビングルームに固定したカメラで、その場所(HERE)で起きた事柄を、恐竜が走り回る太古の昔、氷河期、植物の時代から哺乳類の時代。ネイティブアメリカンが支配した人間の時代、その後、移民に取って代られ、南北戦争直後に家が建ち、そこに住んだ様々な人との人生を、画面をコラージュするように、時間を行き来しながら多層的に描いてゆく不思議な作りでした。(説明が難しい)ある意味SFなのですが、それを感じさせない、幾世代にも渡る命のドラマであり、人生の様々な要素が織込まれた壮大なストーリーとでも表現しましょうか。メインキャストは、トム・ハンクスとロビン・ライトの夫婦なのですが、二人ともティーンエイジャーから老年代までを実際に演じていると言うから驚きです。テクノロジーのなせる技ですが、生半可な技術ではないのは容易に解ります。エンドシークエンスを見終えた後、どっと沸き起こる不思議な感情と共に、「あぁ、これもバック・トゥ・ザフューチャーか」という思いに至りました。そんな感想について、映画好きの人たちと意見を交えたいなぁと思わせてくれる作品です。

「HERE」2024年 アメリカ

あつぎのえいがかんkikiにて


2025年4月27日 (日)

映画レビュー、曲解「ブルータリスト」

まだ寒かった頃に劇場鑑賞した作品「ブルータリスト」。あちこちで評判高かったので見たのですが、正直私にはその良さとか、本質などがあまり理解できませんでした。名優を揃え、すべてに品質の高い作品だとは解るのですが、諸々残念な結果になったのが悔やまれています。己の鑑賞眼の未熟さを呪うと共に、まだまだ修業が足りんと反省したものです。いずれ、配信等でもう一度見直したいな~と思っているところ。

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では何故今頃取り上げる気分になったかというと、最近、伝わってくるアメリカ政府の財政削減政策の話題に絡まるからです。新政権になって、各種公共機関への予算が削減され、携わっていた職員が突然解雇されている様がニュース等で見聞きされます。また、政府の経費削減策による研究経費や補助の打ち切りに伴う人員削減で、長らく世界の学術をリードしてきたアメリカの研究環境が激変し始めているという話しも。それと映画がどう繋がるかというと、「ブルータリスト」とは、「ブルータリズム」という、装飾を排したシンプルでモダンな建築様式のことだそうで、それを先駆け実践した高名な建築家の半生を描いた作品なのです。エイドリアン・ブロディ演じる主人公は、第二次大戦中のホロコーストを生き延び、アメリカに移住したハンガリー系ユダヤ人建築家なのですが、当時のアメリカは、こうした才能ある人材を多く受け入れることで、大戦後の大繁栄に繋げ、冷戦にも打ち勝ち(諸説あります)、現在の地位が築かれる背景になったというのが大方の分析です。だとすると、今の政権が進める政策は、頭脳流出を促すことに繋がるのではないでしょうか。予算を削られて、満足な研究を続けられなくなったり、職を失う研究者が多くなれば、その人達は新天地を求めて、海外に脱出する可能性が高いのではないか。そういった人材の受け皿が日本であれば、我が国の未来も明るいような気がしますが、老齢化し、社会補償費の負担に苦しみ、縮み行く現状ではそれも難しそうです。第二次大戦後とは逆に、欧州などが受け入れれられれば別の未来が描けそうですが、最も懸念されるのは、かつて、バブル崩壊後に割を食った日本の技術者が、韓国や中国に渡って職を求め、結果、頭脳や技術が流出し、あの頃技術立国としてナンバーワンと呼ばれた日本が、あっという間にキャッチアップされ、その地位が相対的に下がってしまった現実のようなことが起きる可能性です。国民の福祉は二の次三の次、国の政策最優先で資金に糸目を付けない共産主義独裁国家が受け皿になるかもしれない。そうなった結果、今は躓いている世界第二位経済大国が、再び成長軌道に戻り、長期的に見る世界のパワーバランスや秩序はかなり変わると思われますが、米国の政権からは、そんな懸念は感じられません。これは正に悪しきポピュリズムではないのかとかと思ってしまいます。普段、映画を見て、政治と絡んだ感想を抱くことは多くないですが、今回は映画そのもの理解に苦しんだ結果、別の視点での感想を抱いたという次第であります。


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