「レンタル・ファミリー」感想文
「非の打ちどころがない」とは、作品の出来栄えが非常に優れていることを高く評価する際に用いられる慣用句です。今風にいえば「まじ完璧!」と言ったところでしょうか。年に二度ほど開いている、SNSで繋がった映画同好の友人たちと催すオフ会。毎回その前に、新作映画を1本鑑賞するというのが恒例行事となっていて、今回は東京のシネコンで話題作をチョイスしました。「レンタル・ファミリー」(英題:Rental Family)今も上映されていて、ロングランの気配です。この作品が「非の打ちどころがない」のでした。製作は、良作をたくさん輩出しているサーチライトピクチャー。ハリウッドのスタジオですが、大予算のブロックバスター(超大作)よりも、中・低予算のインディペンデント系の良作や、エッジの効いた作品を得意としています。撮ったのは、日本人の女性監督「HIKARI」。主役はアメリカ人ですが、撮られたのはほぼ東京周辺と一部地方。本編だけ見れば、外国映画とは思わないでしょう。
東京の今を鮮やかに描く、エスタブリッシング・ショット。高精細なデジタル映像技術を駆使したであろう風景は、東京ってこんなに綺麗だったのか・・と思わせます。主人公が住む古い集合住宅と、向かいにある同じような住居。明示されてはいませんが、物語の流れで小田急線下北沢あたりと推察されるこれらの夜景、碁盤状に並んだ窓の色も美しいです。
小津映画が源流と言われる「ピローショット(Pillow Shot)」。場面転換に挟まれる静的映像。東京の街並み、アパートの室内、廊下や生活空間などは、空間がドラマを語る手法として今や映画作りの常道。孤独社会、巨大都市中の疎外などを暗示する効果。しかし、余白が長すぎないのは、今の鑑賞者、特に国際市場を意識したものなのだろうと推察します。
主人公フィリップが、「レンタルファミリー」を仕事にするt取っ掛かりとなるエピソードが「つかみ」として非常によくできていて舌を巻きました。特に、「結婚披露宴」は、ショートストーリとして完成されていて、何かのオムニバス作品の一部として見ても成り立つ印象です。
全体の文法は、物語性より人間関係の空気を描き、説明を省くことで鑑賞者の共感を呼び起こす作りです。所謂「エモさ」は薄いですが、日本人の琴線に触れるという表現がぴったりかと。メインになるエピソードは、「みあ」という少女の父親役と、老齢の元大俳優「長谷川喜久雄」を取材する記者役。この2系統を並列に進めながら、その他、あるときは推し活の代理、ビデオゲームのパートナ等々いくつかのお得意様仕事の掛け持ち風景を織り交ぜる緩急付けた編集が秀逸です。
演技者としては、主役のレンダン・フレイザー。落ち目俳優の役がぴったり。巨漢だけど、柔らかさ暖かさ戸惑いなどが滲む表情がそれをプラスに変えています。レンタルファミリー主催者平岳大。自らが編み出した仕事への意義と価値に自信とを持つ。冷徹な経営者に人間的な魅力を兼ね備えた演技が良い。レンタルファミリーに所属する山本真理。主役と会社と経営者フィリップとの間で存在感。気の強さと少女のナイーブさを併せ持つもう一人の主役、ゴーマン シャノン眞陽の愛らしさ。そして最高なのは、認知症気味の元大俳優を演じた柄本明。もはや名人芸!(死んだ後も含めてw)
喜怒哀楽をバランスよくちりばめ、よく練られたシナリオ。セオリーを外さない構成と編集テクニック。人の繋がりをベースを置く深みのある人物描写。どれをとっても完璧レベルです。鑑賞後には、作りてからの、こころの柔らかいところにそっと触れられるような優しい感動が得られます。エッセンスを短くまとめた動画などでは決して見てはいけない味わい深い作品でした。見た人の大多数が高評価に挙げるであろうことは間違いないです。
しかし、私個人が好きかというと、意外とそうでもないという印象だったのが映画の面白いところ。高評価で、人には勧めたいけどそんなに好みではない。いろいろな点で、普通じゃない作品じゃないと満足度が低い自分に気づいた(うすうす解ってたけど)として締めくくります。
レンタル・ファミリーRental Family 2025年製作 アメリカ
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