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2007年10月28日 (日)

映画「サルバドールの朝」

 少し前のこと、東京銀座に音楽ライヴを聴きに行く予定を入れていたので、滅多にない都心詣でのついでに、単館上映作品を鑑賞してきました。 作品は表題の「サルバドールの朝」というスペイン映画です。上映館のシャンテシネは、映画の街日比谷にあっても小さな劇場で、主にヨーロッパ作品を中心に上映している所謂ミニシアターです。 毎週金曜日の夕刊に、新しくかかる作品の広告が掲載されると、いつも魅力的な作品がそこに見つけられます。

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作品は、フランコ独裁政権下の末期の実話を元に描かれた作品とのことで、MILと呼ばれる反体制グループの活動に身を投じた主人公が、逮捕拘束され、理不尽な死刑に処される課程を描いたものです。 
 物語は、主人公が銃撃戦の末逮捕されるシーンから始まり、投獄された後、担当弁護士との会話の中で、そこに至った過去を振り返りながら進んでいきます。無鉄砲な若者が時代の空気に乗って突っ走っているかのような反体制活動の様、その仲間たちとの日常。それと対比するような普通の人生を送ろうと望む恋人との関わりなど。 そして、人権派担当弁護士の努力の甲斐なく、主人公サルバドールに死刑判決が下され、それを回避しようとする周りの人々の描写、次第に迫り来る死の瞬間へとつづく主人公の心の動き、担当看守の変化、家族、特に父親・末妹との関係などが後半のストーリーにちりばめられながら、悲劇へと向かって進んでいきます。

 観た後の感想は、当時のスペイン(カタルーニャ)の社会背景をある程度予備知識として持っていないと、作品の本質を理解するのが苦しいかなという印象が強く残りました。 多分、スペインの近隣欧州国では、基礎知識として多くの方が持っているだろうこの肝心の部分を、自分の無知故持ち合わせていないことで、全編に流れる思想的なテーマと、主人公の若者が当時の社会に与えたインパクトの大きさを実感できなかったことがイマイチ残念です、悲劇的なテーマの作品であるにもかかわらず、ドラマチックな描写は控えめで、感動の涙を期待して望みましたが、若干違った後味でした。 これが、制作者側の意図なのか、私自身が、物語の中で主人公の生き方に強いシンパシーを感じ得なかったからなのか、今は解りません。 

 しかしながら、主人公が残虐な方法で極刑に処されるという結末は予備知識として知っていたので、物語の終盤、処刑が近づくととともにその刑具(というのでしょうか?)を作っている作業の音が流れながら、その瞬間に近づいている描写には、胸が締め付けられました。

 サルバドールの棺が埋葬されるエンディングでは、事実を知った市民が多く弔問に押し寄せたとのクレジットが流れ、象徴的なシーンとして、雨に濡れた石畳に散らばった多くの赤いバラが映し出され、情緒的な結末を演出していますが、社会現象にまでなったというこの結末を、肌感覚で受け止められる鑑賞者がうらやましいです。

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