緊急事態宣言解除?
猛威を奮ってきた、新型コロナウイルスパンデミック第5波。一時、新規感染者が全国の合計で、1日当たり2万人を超えることもありました、医療のひっ迫に伴い、入院できず自宅での療養を余儀なくされる人たちが多数に上り、適切な治療を受けることができず、死亡に至るという悲しい事態も見られました。緊急事態宣言、蔓延防止措置は全国各地に出され、対象地域の知事からは、行動抑制を願うメッセージが何度も発せられました。
感染者、重傷者数の推移ですが、ここにきて急速な減少に転じています。政府は、ワクチン接種率が上がっていること、新規感染者数の減少傾向を理由に、緊急事態宣言や蔓延防止措置の解除と、行動抑制の緩和に舵を切る方向への検討に入ったようです。一方、こういった報道がされますと、冬に向け、次の感染爆発を懸念し、まだ早いという反論も起きます。医療関係の専門家は勿論、市民の間でも、ネットへの書き込みなどを見ると、一定の割合でそういった考えをお持ちの方もいらっしゃるようです。
そういった懸念には納得できるところもありますが、一方で、長期に渡る市民の行動制限、移動制限、飲食店を中心にした時短要請などによる負の影響がとても懸念されます。パンデミック初期、昨年春頃の手探り状態下での、強い行動抑制からはある程度の緩和傾向とは思われますが、それでも、まだまだ苦しんでいる事業者やフリーランサーは相当数に上るはずです。イベントがなけれは、主催者は勿論、現場でサポートをする方々の仕事はありません。ひとが動かなければ、旅客需要はありません。観光で生計を立てていらっしゃる事業者の皆さんも同じでしょう。その他、私の知らない業界で苦しんでいらっしゃる方は相当数に上ると予想され、明日への見通し、希望を持てずにいらっしゃる方の立場を慮ると、悲しい気持ちになります。
飲食業へは、営業自粛や時短営業に応じた事業者に助成金が支払われ、満足ではないかもしれませんが、一定の効果があるはずです。一方、その他の事業者への助成については縛りがあり、無条件での適用はありません。売上高が、緊急事態宣言下での一定期間に於いて、パンデミック前と比して概ね50%減となることが条件であることが多いです。個人事業主で最大100万円、法人で200万円というボリュームで、一度だけ給付された「持続化給付金」と同じ条件です。しかし、事業者は厳しい環境にあっても、経営を維持するために、様々の対策を立て、売上げの確保に全力を投入しているはずです。そういった中で、売上げ減50%以上が長期に渡って起きているとしたら、普通に考えて事業継続は不可能な事態ではないでしょうか。逆に、減少が50%未満の場合には給付対象ではありません。あまりに厳しい条件です。要するに、政府や自治体には、サポートは最低限だから自分の努力で頑張りなさい・・と言われているようなものです。
また、金融の資金サポートでは、無利子無担保の緊急融資枠が設けられ、当面の資金需要をまかなえる措置がありましたので、利用している事業者は多数に上るようです。しかし、これはあくまで借入金であり、いずれ返済の時期がやってきます。おそらく、感染拡大初期に受けた融資は、そろそろ返済開始時期になっているはずです。売上げが回復しない状況での返済が厳しい事態なのは明らかです。
私も、「持続化給付金」「コロナ対応緊急融資」「雇用調整助成金」と、可能な手立てはすべて使い、事業の継続に全力で取り組んでいますが、パンデミック前の売上げを維持するのは、簡単ではありません。
こういった現実を見ると、やはり一刻も早く人とお金の流れを元に戻し、事業者が健全に稼げる状況に戻す必要があるのではないかと考えます。人の命とカネとどちらが大事なのかという反論もあるでしょうが、どちらか一方を選択するというのではなく、何とか両立させていかなくては、この先悲惨な未来が待っているのでは無いかと考えてしまいます。欧米のように、行動制限を一気に緩和し、経済回復を最優先にするという舵取りは、おそらく日本では受け入れられないでしょう。であるなら、経済活動のいろいろな場面、環境に於いて、パンデミック下で実施された制限を実験的に少しずつ解除し、医療とのバランスを保ちつつ経済を動かす方向に向かって欲しいと思うのです。
菅首相就任当時に実施された各種のGotoキャンペーンは、感染拡大を招いたと批判され、尻すぼみとなってしましましたが、対象だった事業者には、救いの神にも見える政策だったのではないでしょうか。これから同じような支援策が打ち出されるか解りませんが、パンデミックの影響をまともに受けている事業者の中には、今現在、何の支援も受けられず、じっと回復を待ち続ける方々。耐えきれず、廃業を余儀なくされる方々、沢山いらっしゃるはずです。こういった事業者の存在に少しだけでも思いを馳せ、行動制限解除に対して、声高に、ヒステリックに、頭ごなしに反対を叫ぶ時期はもう終ったのではないかと考えます。治験が進められている、コロナ感染に効果があるという既存薬、間もなく実現が近いと伝えられる治療薬にも期待し、一日も早い『復興』を願いたいです。
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