先日の休み、となり街の小劇場で、上映終了間近の映画を滑り込みで見ました。「逆転のトライアングル」。「超」を付けてもよろしいかと思うくらいの、ブラックな大人のコメディ。映画ファンの皆さんには、あの「フレンチアルプス」の監督作品と言えば、ご想像いただけるかも知れないですね。なかなか面白かったです。
タイトルの「トライアングル」は、市場主義経済における「ヒエラルキー」のことなのでしょう。社会の階層は「ピラミッド」に比喩されることもありますが、タイトルとしてはこっちのほうがスッキリしてますね。それが逆転するというのがテーマなんですね。他にも、ジェンダーロール、ルッキズム、人種間階層と貧富、マネー至上主義等々、ポリコレ的には、存在を声高に言ってはいけないこととなっている、現代社会の諸問題に鋭くツッコミます。大好物のテーマですw
私の住む神奈川の端っこの小劇場でさえ終了間近。都会ではとっくに終ってますので、これから劇場鑑賞される方は少ないと思いますが、ここからはややネタバレ含んで書きますので、これから見ようかな~と思う方は御注意。
全体が三部構成になっていて、物語全体の主役を張るのは美形の若い男女、ファッションモデルのカール(キングスマンのプリクウェルとザリガニに出てたのね)と、とってもセクシーな同じくモデルのヤヤ。第一部の冒頭、カールを含むイケメン男が多数登場するオーディションシーンからシニカルさ爆発で、「お!結構攻めてくるね~」とニヤニヤさせられます。モデル業界では、女性が男性の3倍稼ぐそうで、最初の逆転現象に起因する諸問題が二人の間で、深刻且つバカバカしく語られます。ここらあたりははっきり申し上げて、当事者以外には聴くに堪えません。笑えます。(冷笑ですがw)
第二部は、舞台を超豪華なクルーズ船に移します。ここからが物語の本番開始。カールとヤヤも何故かこの豪華船に乗り込んでいるのですが、何でよ?と思うと、なるほど、ヤヤがインスタか何かSNSのインフルエンサーらしく、船主から招待されたと言う訳でした。イマドキの、演出され作為的に作り上げられた評判価値の裏を見せてくれるという設定でした。これもタイアップの一種?笑えます。 そして、船内で二人が出会う金持ちたちが半端なくスゴイです。どういう風にスゴイか、是非ご覧になって確かめてください。ほとんどが所謂「成金」です。彼らにかしずく、クルーズ船の接客クルーたちもまたスゴイです。フツーの日本人は、一生お目にかかることは無いでしょうが、世の中にはこういう世界があるのですね~。笑えます。やがて、大好きなウディ・ハレルソン演じる飲んだくれ船長と、ロシア人富豪のバカ妻のせいで、クルーズ船はトンデモな事態に陥ります。本当のトンデモです。ゲ●やウ●コがこれでもかと(閲覧注意レベル)盛大に溢れ出ます。苦手な方は御注意を。でも、笑えます。そして船は沈みます。
第三部は、無人島に舞台を移します。沈んだ船から脱出し、流れ着いたカールとヤヤ。他数名の金持ち乗客とクルー。ここからタイトル通りの逆転劇の幕開けです。水及び食料僅か、文明の利器一切無しの状況で、まるで役立たずの文明人セレブと、やたら逞しくサバイバルに長けたアジア女性クルーが、船上と正反対のポジションになってどーなるかというのが最終的なキモでした。注目したのは、所謂クルーズ船ワーカーの中でに於いても、最低位と見なされていたアジア人女の「私に従わねばメシやらんからね~」と、やたらエラソーな女王様的振る舞いに対して、へいこらするしかない億万長者たち。そんな屈辱的状況に於いても、妙にいい人として描かれていることです。ちょっと考えさせられ面白いです。そして、物語を通して、見た目の良さ以外、何の取柄も無いダメなやつとして描かれたカールが、意外なポジションを得るという、これまた皮肉な展開。笑えます。
エンディングは意外な展開に。しかし、結末を語ること無く、スパッと切ったように描かれ、掴み所の無いシークエンスで終ります。見た人が集まって、あの後どーなったかな。あのラストはどういう意味かな。映画評論家など専門家の解説を読む前に語ると楽しそうです。北欧州の作家作品ながらそれらしくなく、名画とは言いがたいですが、妙に満足度が高い不思議な作品。次作も絶対見る!と固く誓う私でした。