夏頃、官房長官の発言をきっかけに注目されだした、携帯電話通信料金のお話。「携帯電話料金は4割値下げできる余地がある」という会見での発言は、かなりのインパクトをもって受け止められているのではないでしょうか。これに対して、妥当だという賛同意見、高すぎるという指摘は当たらないという専門家の否定的意見など、両論が出て来て、論議が巻き起こっていましたが、新たな動きがあったようです。
キャリア最大手のNTTドコモは、昨日10月31日付けで、「現行の料金プランを見直し、2019年4─6月期に2─4割程度の値下げを行うと発表した。」と伝えられました。結果的には、料金を取りすぎていたと認めることとなった訳です。他の大手2社も、追随するのは確実と見られますから、正に、官房長官鶴の一声が、大企業を動かすことになるという構図です。
モバイル機器は、国民の多くが利用する生活インフラの重要な一部であり、生活費に占める大きい固定経費となっていますので、サービスの質が下がらすにコストが下がるというのは、歓迎すべきことでしょう。
しかし、ちょっと考えてみると、この構図には問題が含まれているように思います。
民間企業が設定する商品やサービスの価格について、政府の高官が異議を唱え、結果としてその意向に沿った方向に価格を変えるというのは、およそ自由な市場経済での出来事とは思えません。通信事業が、政府の認可が必要であること、官房長官が、過去に総務大臣を務めていたことを思うと、その影響力は絶大とは思いますが、まるで統制経済下の国のようにも見えます。
一方、携帯電話の市場は、ご存じのように大手の3社がほぼ独占していますので、官房長官の発言のように、競争原理が働かず、各社横並びの料金が割高であるというのも、一定の説得力がありそうです。
今回の流れは、結果として私たちの懐が、少し暖まることになりそうですが、大企業独占による価格高止まりと、政府の市場への介入。どちらを是とするのか、少し考えてみる機会になるのではないかという気もしています。
最も望ましいのは、携帯電話市場が、ある程度の参入者によって校正化され、「見えざる手」が、適正な価格を決めてくれるというのだと思いますが、膨大なインフラ投資と維持コスト、テクノロジーの進歩の速度への対応の難しさなどが、これらを阻んでいるのもご存じのとおりです。黎明期には、もっと多数いた事業者が、再編を経て結果として3社になってしまったのも、その証明かと思います。
楽天が2019年10月に4社目として参入する見込みだとか。3社が4社になることで、今より競争が促進されるのかどうか、注目に値しますね。
ちなみに、私個人は1年ほど前に、長年使っていた大手キャリアから、所謂格安SIM事業者に乗り換え、毎月の通信コストが、半額以下になりました。