消えゆく写真屋さんその2
その日は、前日までに受け付けたDPEを受け取りにこられるお客様がちらほら見受けられましたが、店に顔を出す大半は常連客で、口々に閉店を惜しむ声と、長年の営業期間へのねぎらいの言葉を、ご主人にかけていらっしゃいました。
中には、きれいな花束を持参された女性客もいらっしゃり、普段は額に入った写真以外にはあまり飾り気のない店内も、ぐっと華やいだ雰囲気になりました。
↑西日を浴びて記念写真。中央が店主井上さん。
日も落ちかかった頃、三々五々集まってきた常連客のなかに、本日の仕切り役の方がいて、閉店後に「ご苦労さんパーティー」の段取りを骨折っていただいたようです。 店内の什器を片付け、出前の料理などを並べると、ちょっとした宴会場に早変わり。 十数人の参加者は、それぞれ気心の知れた同士で、昔話や、写真談義などに花を咲かせているようでした。
私にとっては、右の写真の石崎、石山両氏には、学生の頃とても懇意にさせていただき、且つお世話になっていたので、十数年ぶりにお目にかかれ、楽しいひとときでした。(お二人は当時、会社の上司部下の関係だったそうです。)
異色だったのは、右の写真の女性、塩屋夫人。私は初にお目にかかったのですが、 最近話題の、実話に基づいた映画「0からの風」でメガホンをとられた、映画監督で俳優の塩屋俊氏の奥様です。 この日も、「0からの~」制作の裏話などをご披露くださり、興味深く拝聴しました。
宴の最後には、小さなくす玉まで用意され、井上ご夫妻が割り、ご主人のごあいさつで幕を閉じました。
写真の媒体は、撮影・プリント共にフィルムからデジタルにだんだん移行していて、その流れは戻らないでしょうから、所謂「まちの写真屋さん」という営業形態は減少の一方だと思われます。 技術革新のおかげで、すそ野が広がってはくる反面、旧来型の資産が失われていく現象は、あちこちで見られます。 歴史の節々で繰り返されてきたことではあると思いますが、「イノウエフォート」の閉店に立ち会い、そのヒトコマを垣間見た思いがします。
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