なんちゃって映画感想文 Feed

2009年2月25日 (水)

チェ 39歳別れの手紙

Che39_1_1b 革命家の生き様死に様、過酷なゲリラ戦に息が詰まりそうに・・

 世界中注視の元、国連議場での演説シーン、前作で描か れ、生涯で最も注目された時期から数年後、再び革命闘争に身を投じ、その生涯を閉じるまでの1年余りを描いた今作は、深く胸を打たれた作品でした。 今、 顧みてみると、前作はこのPart2を見せるためのプロローグであったと位置づけてもいいのかも知れません。

 一歩ひいた視線で撮られ、ド キュメンタリー色が濃く、突き放した印象の前作「28歳の革命」と打って変わり、ハンディカメラを駆使し、ゲバラ自身、あるいはゲリラ戦士の目線にいるよう な映像は、臨場感に満ち、あたかも自分が過酷なゲリラ戦を体感しているようです。 戦闘シーンも多く、彼の伝記的な側面だけでなく、普通のドラマとしても 十分に楽しめると思います。

 そして、今までほとんど知らずに過ごしてきた、革命家チェ・ゲバラという人物の生き様、死に様を、今初めて驚きと敬意を持って眼にしました。 劇中で語られる、彼の言葉のすべてが真実であり、一つ一つが重く迫ってきます。 

 キューバ革命後、政府の要職に就きながら、そのあまりの理想主義ゆえ、周囲から疎まれたというカリスマが、政治の舞台を捨て、妥協を許す余地のない究極の「仕事場」戦場に再び戻っていったのは、 必然だったのかもしれません。 che1.jpg

  史実により周知の通り、この闘争は失敗に終わり、ゲバラ自信も処刑されるのですが、組織の小さなほころびや、現政権と米国による軍事、情報両面からのゲリ ラ掃討作戦により、追い詰められ敗走する過程で、あるいは、捕らえられ、処刑を待つ僅かな時間の中で、皮肉にも彼のリーダーとしての資質が最も輝きを放っ ていたように受け止められました。 

圧倒的に不利な状況でも、最後まで革命の成功を信じていたのでしょうか?  古ぼけた小屋の中で銃口 を向けられ、絶命する瞬間の目線の先には、何を見ていたのでしょうか?  もしも今、彼が存命だったら、イデオロギー対立は既に過去のものとなり、グロー バリズムの名の下、市場経済最優先の結果躓き、混迷を深める今の世界をどう見るのでしょうか? 硬派な作品を見終わっての素直な感想です。

at MOVIX橋本

2009年2月14日 (土)

チェ 28歳の革命

Che28_1_1b 武装革命闘争のリアリティは十分伝わるのだが・・

没後40年以上経過してもなお、絶大な人気を誇る社会主義革命家チェ・ゲバラの若き日の闘争を描いた作品。

 ドキュメンタリーに徹したような作風には、賛否があると思います。

 映画作品に、ストレートで深い感動を求める観客には多分受けない作りではないでしょうか。有り体に言えば、盛り上がりが無いのです。
 カストロ運命的な出会いをし、武装闘争に身を投じる決意をしたとされるシーンも、あまりにも淡々と描かれ、高揚感のようなものは感じられません。

 当初は軍医として同行しながら、そのカリスマ性から次第に人心を掌握し、反乱軍ナンバー2に上り詰めたという人物像が、さほど魅力的に描かれているとも思えませんでしたが、その辺は作り手の意図なのでしょうか?

 決して嫌いなテイストの作品ではないのですが、リアリティとドラマ性をもう少しうまくブレンドしてもらったほうが、より楽しめたかもしれません。

 革命後は、指導者として要職につきながらその地位を離れ、その後再び革命闘争に身を投じたという後半生を描いた続作品に期待したいです。


at MOVIX橋本

2009年1月31日 (土)

「ワールド・オブ・ライズ」

World_lies_1_1b ◆ Body of Lies が原題。 中東を舞台にした対テロ情報戦がテーマの、9.11以降のアメリカにとって最大の政治的、軍事的脅威を背景にしたサスペンス調のドラマです。作品冒頭のクレジットに書かれたように、ドキュメンタリーとフィクションの中間に位置するような仕上がりになっています。

冷戦終結後 、その存在感が薄れていると言われてきたCIAが、新たな驚異「イスラム原理主義過激組織」の登場により、皮肉にもその活躍の場が再びクローズアップされ、このような作品が多く生まれることになっているわけですね。

ス トーリーの大筋展開に、特に目新しさは感じません。 かつてのスパイ映画や、最近の中東もの対イスラム過激派をテーマにした作品をご覧になっている方な ら、どこかで見たことある展開だなと感じられるでしょう。

  しかし、現地のエージェントが、敏腕ぶりを発揮し敵との情報戦に挑み、やがて陥る危機一髪の状況 を、米本国の指揮官と第三国ヨルダン情報局のトップが入り乱れて結末へと進んで行く過程は、とてもスリリングで楽しめました。 リドリー・スコット監督の 手腕なのでしょう、そのリアルさが抜群で、今現在、中東のどこかで起きている状況を疑似体験しているような気分にさせられました。 ホフマンが、ハイテク を駆使し冷徹な作戦を仕掛けながら、その過剰とも見える自信が、正反対の作戦を遂行するヨルダンのハニによって見事に覆される設定は、唯我独尊をひた走っ てきた現代アメリカの状況をイメージして作られたのかも知れません。

さて、作品広告のキャッチコピーにツッコミをひとつ。インターネットを筆頭に情報源と価値観が多様化する中、最後まで二元的な物言いを続けた前米国大統領じゃあるまいし、「アメリカの敵は世界の敵」のようなステレオタイプのコピーはアナクロ過ぎて、作品のリアリズムが泣きます。 キリスト教文化が染みこんだ西欧文明だけが救うべき世界ではありません。 世界中がイスラムと敵対している訳ではないぞ・・・と。

at MOVIX橋本

2009年1月 4日 (日)

「Across The Universe」

Across_the_universeプルーデンスへ。少しの友の助けがあれば螺旋階段を下れて、ルーシーも空を飛べる。黒い鳥も、セイウチも、もしも恋に落ちたなら、君の手を握りたいと願う・・。なぜなら、イチゴ畑は永遠で、愛こそがすべてだから。オー!ダーリン、なすがままに。

 予告編で見た、冒頭で主役がアカペラで歌う「Girl」にぞくぞくっとし、劇場に行こうと決めました。

  私はビートルズより少し遅れてきた、しらけたノンポリ世代なので、ヒッピー文化やポップカルチャー、ベトナム反戦などに端を発した政治的なムーヴメント等、若者がエネルギッシュで大きなうねりの中にいたこの時代に、ほのかなあこがれを持っていました。 まさにその時代を描いたこの映画には、弱いところに 直球を投げつけられた感じです。

 ミュージカル作品ですから、筋は至極単純な男女の恋愛物語です。 宣伝コピーにあるような「宇宙規模のラヴストーリー・・」ではありません。 しかし、ビートルズの数々の名曲たちに圧倒され、シンプルな展開にぴたっとはまる選曲のセンスと演出にはすっ かり脱帽しました。 そして、時代のうねりの前には男女の愛のカタチも影響を受け、変わってくるとのだという事実も目の当たりにし、真摯にぶつかり合う若い男女の姿の美しさに、じんとしました。

  ジャニスのような女性ヴォーカリスト、ジミヘンのようなギタリストなどキャスティングにニヤリとさせられたり、主人公の描くイラストから、ジョンのそれを 彷彿とさせられたり、嬉しいネタがたくさんちりばめられているのも楽しいですね。 ボノ、ジョー・コッカーにもしびれます。 そして圧巻は、「ストロベ リー・レコーヅ」屋上での演奏シーンです。「All you need is Love」には、涙が滲みました。 ミュージカル映画で泣けるなんて・・。

 素敵な音楽は人を元気にしたり温かい気持ちにさせる、元気になったり温かい気持ちになった人は他人に優しくできる、こんな小さな連鎖で世の中が少し元気に なったり優しくなったり、明るくなったりすれば、進むべき正しい路が見えず、閉塞感に満ちた21世紀初頭の今の世界も少しは良くなるかな?などと、既に二 人になってしまった巨匠達の遺産に触れながら、少し思ったのでした。

at MOVIX橋本

2008年11月 9日 (日)

迷子の警察音楽隊

Maigo 鮮やかな水色の制服を着た、浅黒く彫りの深い顔のアラブの男達が、所在なげに並んで迎えを待っている無言劇のような冒頭シーン(ポスターの絵柄も同じ)から、作品全体のトーンが伝わってきます。

 英国題The Band's Visit イスラエルの作品なのでヘブライ語の原題は読めません。

 異国の見知らぬ土地に、図らずも滞在することになった警察音楽隊の面々、その一夜の出来事を綴った90分あまりの短い作品ですが、ほのぼのとした雰囲気とそこはかとないユーモア、絶妙の間がおいしい、いい作品だと思いました。

ア ラブの盟主エジプトの警察官たちが、隣国でありながら建国以来決して良好とは言えない関係にあるイスラエルに赴く。両国の関係、距離感などを深くは知らな くとも、その微妙なシチュエーションが、彼らの心細げな描写の根底にあることは容易に想像がつきますが、そのあたりについての深読みが必要とは思いません でした。

 異国からの突然の来訪者と、それを受け入れる辺境の町の人々、それぞれが母国語でない言語でぎこちなくコミュニケーションをとり ながら、少しずつ心を通わせて行きますが、その過程の小さなエピソードの積み重ねによって登場人物像の輪郭も見えてきます。 このあたりの作りにも好感が持てます。

 隊長と食堂の女主人との交流、若く女たらしの隊員が初な若者に恋の手ほどきをするシーン、枯れかけていた初老の隊員が希望を取り戻すシーンなど見所が何点かあります。それぞれが自然で、妙な教訓じみていないところもオススメです。

 現代の大人の童話として、アラビアンナイトに書き足したいような作品です。


at MOVIX 橋本

2008年10月 2日 (木)

悲しみが乾くまで

Kanashimi_1_1b THINGS WE LOST IN THE FIRE 「私たちが炎の中で失ったもの」という名の作品、邦題はストーリー全体に流れるテーマを意味していますが、原題は作品内で語られる、とても感動 を呼ぶワンシーンから象徴的に選ばれていますので、その違いがちょっと複雑です。

  突然夫を失ったことで、それまでの幸せな生活が一変し、幼い子供と3人で悲しみに立ち向かってゆかねばならない美貌の未亡人。 死んだ夫の親友で、心なら ずも麻薬中毒患者となり、再生を志す元弁護士の男。 それぞれの複雑な思いを持ちながら始めた共同生活。 こんな境遇の二人が恋に落ちたりしたら、ただの チープなメロドラマと化してしまうところですが、さにあらず。 その課程で描かれる深い人間ドラマは、脚本、演出、出演者、きわめて上質です。

  登場人物は少なく、オードリー(ハル・ベリー)、ジェリー(ベニチオ・デル・トロ)の主役二人、その他、夫役のデヴィッド・ドゥカヴニーや子役達など10 人に満たないかもしれません。それ故に、それぞれの人物像やこころの動きなどを丹念に作り込み、決して大袈裟ではないドラマが、深い味わいの作品に仕上 がっていると思います。

 特にアカデミー俳優主役二人の役作りは見事です。  夫の死後、子供の前で気丈に振る舞いながらも時折見せる女の弱さ。、亡き夫の親友ながら敗北者であるジェリーとの微妙な関係に、お互いが抱く揺れ動く思 いとその変化、距離感の移り変わりなどを、とてもうまく表現しています。 また、一旦立ち直ったかに見えたジェリーが、再び麻薬に手を出し、禁断症状に苦 しむ様は、まさに鬼気迫る演技です。

 しかし、それらを本物に仕上げているのは、以前、「アフター・ウエディング」という作品で出会ったデンマーク人女性監督 スサンネ・ビア、今回がハリウッド初進出作品だそうですが、その手腕は見事です。 とても微妙で、難しい状況設定のドラマを巧みに映像化し、決して多くはないセ リフと、眼差しのクローズアップを多用した独特の作画は上品で、静かな感動に満ちています。 

 先への希望が感じられるエンディングのすがすがしさも相まって、大人の鑑賞に堪える良作だと思います。


at横浜ジャック&ベティ

2008年8月31日 (日)

闇の子供たち

Yami とても重いテーマの作品です。真夏の陽光の下、夏休み真っ盛りの大都会のシネコンで見ましたが、お子様向け作品を見に来ている幸せそうな親子連れの人並みをかき分けながら、金属の固まりを飲んだような感覚での帰途になりました。

 途上国における闇社会、貧困からくる悲劇、前編を通した悲惨な描写は、かなり現実を反映しているとのこと。

  本作で描かれた白人や日本人の幼児買春客たちは、憎むべき現実が存在していることを告発し、私たちが知らない影の世界を暴いて白日にさらしてくれます。  大多数の普通の者は、この変態野郎達を蔑み、悲惨な子供達の現実に心を痛めることになるのです。 売春宿でエイズに感染し、捨てられた少女がやっとの思い で故郷までたどり着き家族の元に戻りますが、その末路は本作中最も悲惨なシーンとして忘れられません。

 そして平行して描かれるもう一つ のおぞましきテーマ、生きた子供の臓器売買については? 梶川の立場に自分が立たされたらと考えたとき、突然その重さが圧倒的な現実感を持って迫ってきま す。この夫婦の言葉に、どこかで共感している自分の心に恐怖と嫌悪を抱いてしまいます。手術を阻止しようとする者、事実を告発しようとする新聞記者、我が 子を救いたい親、三者三様の思いが交錯する梶川家のシーンは、象徴的で、とても考えさせられる演出だと思いました。

 エンディングのワンシーンについては、賛否が分かれると思いますが、残念ながら私は違和感を抱きました。 上映終了後、これについての客同士の会話から、ストーリーの結末を一部曲解しているニュアンスが聞き取れ、その感を強めました。

 また、状況設定にやや強引さが見られるところ、終盤のアクションシーンの挿入の仕方など、やや首を傾げたくなるところがあるのが残念な部分ではあります。少しマイナス点でしょう。

 豊原功補演ずる清水が異国と日本の距離感を縮め、リアリティを高める役柄として印象に残ります。そして、タイ人の重要な登場人物男女二人が、日本人に対してぶつける激しい嫌悪感は、強烈なパンチを私達に食らわせます。

サスペンスとしての結末も楽しめますし、最後まで釘付けられる質の高い社会派作品として高評価したいと思います。


109シネマズMM21にて

2008年8月 2日 (土)

告発のとき

Kokuhatsu唯一の超大国が抱える闇を静かに告発する・・。戦場で壊れてゆく若者達の見えざる事実。

イラクから帰還した息子マイクが失踪したことを知らされた、トミー・リー・ジョーンズ扮する元軍人警官の父親ハンクが、息子の所在を確かめに基地の ある町に向かう。無断離隊という不名誉な行いに釈然としない厳格な父は、軍警察の捜査に納得せず、シングルマザー女刑事エミリー(シャーリーズ・セロン) とともに独自に事実の調査を始める。そして、次第に明らかになる真実。

 2003年に起きた事実を元にポール・ハギスが監督、脚本を手がけた作品とのこと。 あまり多くの予備知識を持たずに望みましたので、行方不明の息子を 捜す謎解きミステリー的なテーマの作品と思っていましたが、それだけではありませんでした。 いい意味で裏切られました。

 マイクの死の真 相へ迫る過程で、彼が残した携帯電話の映像や声、戦友から知らされた「ドク」という愛称の由来などから、戦場イラクで何を見、体験し、心をどのように変化 させていったかが明らかになるにつれ、その闇の深さを父ハンクの目線を通して知ることになります。 軍人一家に生まれ育ち、正義感に溢れたよき青年が、戦 場の狂気により心を破壊されていく事実はあまりにショッキングで、言葉もありません。 退役軍人らしく投宿中も規律正しい日常生活スタイルを貫いていたハ ンクが、事件の事実に迫るにつれ、心なくも自堕落な態度に変わっていくのにも、抑制の効いた態度の裏に隠された心の変化が読み取れます。

 そして、更に暗鬱になるのは、マイクを惨殺した犯人のセリフ、「自分たちがマイクを殺したが、時と場所が違えば、自分が殺されていたかも・・」。 そして、父に謝罪をするその目に精気はなく、うっすらと笑みさえ浮かべる表情はまるで抜け殻のようです。 

  刑事エミリーの存在は、軍社会の外側からの目線、つまり普通の米国人の感覚で事件を捉え、別の意味でのアメリカ社会が抱える暗部を対比させているようで秀 逸だと思います。 その幼い息子にハンクが語る「ダビデとゴリアテ」の逸話が、本作の原題“エラの谷” の意味するところでもあります。

  このところ、米国の映画シーンはイラク戦争への反省ブームともいえ、この種の作品が多く作られています。 自由と正義と名の下、世界中に軍を送り続ける覇 権国家アメリカ。その国が、逆さ国旗を掲げなければならない事態に陥っているとしたら、それはいったい誰に向けてのメッセージでなのでしょうか? そし て、その混迷の出口は何処にあるのでしょうか?


at TOHOシネマズ ららぽーと横浜

2008年7月14日 (月)

「潜水服は蝶の夢を見る 」at名画座

Scaphandre_1_1a この不思議なタイトルからどんなイメージを抱かれますか?

 突然の脳障害で「ロックイン・シンドローム」(閉じ込め症候群)におかれた主人公の、実話にもとづく作品です。ただし、この症状、脳は正常に働いているのですが、身体が麻痺して動く事もしゃべる事もできません。 唯一のコミュニケーション手段、それは左目のまばたき・・という驚くべき状況で書かれた本が原作となっています。

 長い昏睡から目覚めた主人公「ジャン=ドー」の“目線”で物語は始まりますが、異様な光景が、彼の置かれた現実を次第に見るものに明らかにして行きます。 この特殊な状況の中、彼はサーポートしてくれる人々の助けにより、意外な方法でその意思を伝えることを試み始めます・・。

 人の尊厳を問うた格調高い感動作といった作品かに思えますが、意外ににそうではありませんでした。 前半は、言葉を発せないジャン=ドーの心の声と目線での映像で描かれますが、その言葉には、このような状況での心情とは思えぬユーモアが漂い、彼の人となりが推し量られます。 

 そして、まるで重たい潜水服を着せられ深い海の底に一人取り残されたような状況にあっても、「想像力と記憶で僕は、蝶が自由に舞うように、自分をどこにでも連れて行ける」思いを抱いた彼のイマジネーションが映像化されるシーンは、時に美しく、時にエロチックに、時に暖かく表現され、作り手の素晴らしいセンスを感じます。

 後半になって、カメラは"普通"のポジションに移り、ジャン=ドーの姿を初めて見ることになります。 大きく開かれてきょろきょろと良く動く左目、そして、それと対照的な無表情、病に倒れる前の人生を謳歌する元気な彼も。 前半の、どちらかと言えば観念的な映像から一変して、現実と過去との落差を直視させられます。 その哀れを誘う姿が、見る者の心を痛めることも確かにあります。 しかし、別れた元妻や子供達、息子の不幸を悲しむ年老いた父親、彼の"口述"を記録する女性編集者、メディカルスタッフ、そして現在の恋人など取り巻く人々との接点の描写が、彼の人間くさい普通の人ぶりをよく表していて、特別ではなく、身近に感じるのことができる作りになっているのです。

 身体の自由を奪われたジャン=ドーの服が、病人のそれとはまったく違い、いつもしゃれたいでたちなのにも、ココロをくすぐられます。

 美しい映像、そこはかとない愛と希望が漂う大人の鑑賞に堪える素敵な出来だと思います。

オマケ:フランスの充実した医療システムを目の当たりにし、マイケル・ムーアの「シッコ」を思い出しました(笑)


at 横浜ジャック&ベティ

2008年7月 3日 (木)

「●REC」

Rec

 P.O.V.(PointOfView)手法による、リアルパニックムービーとのこと。日本語では主観撮影と訳されるそうですが、現場に居た人が撮影した衝撃映像が映画そのものになっているというやつですね。

 「撮るのよ全部!」という主役リポーター役の言葉が最後まで繰り返されることで、その必然性を強調しているという訳です。 先の秋葉原事件の時 も、多くの人が現場に向けて携帯やら、デジカメやらを向けて撮影している風景を見たばかりなので、こんな作品が次々登場する時代的な背景が整ってきたとい うことでしょうか。

 作品中BGMはまったく使われていませんので、ビデオカメラの生中継を見ているような作りがリアルさを醸しだし、観客自信が、あたかも現場にいるような感覚で見ることになるわけです。また、視野が限られることで、見えないところへの恐怖心を煽っているのかもですね。

  P.O.V.撮影については、手持ちカメラの撮影者がTVクルーという設定なので、高速パーンがほとんど無く、ブレも少なかったので見ていて目を回したり、酔うこともなく助かりました。

  閉鎖空間、スプラッタ、オカルト的要素など、低予算と思われる中で、怖がらせ要素がいろいろ工夫されていて、中盤以降では「ぐー」に握った手にかなり力が 入ってしまい、しっかり怖かったです(汗) 特にクライマックスの「開かずの間」の中で繰り広げられる、謎解きに迫るおぞましきシーンは、心臓のヨワい方 は遠慮されたほうがいいかもと忠告差し上げたい出来映えです。

  終盤の落としどころに向け、都合のよい状況設定や、展開に無理があるなとツッコミたくなるところもありますが、そのあたりはホラーを楽しむにはそこそこ目をつぶるべきかと・・。 

 余談1:見終わった後明るくなった場内で、私の近くにいたカップルの会話。女性「もっと怖いかと思った。」青ざめた男性「・・・。」

 余談2:作品に邦人らしき登場人物がいて、「私がしゃべってるんだから~!!」みたいな言葉を日本語で叫ぶシーンに苦笑。


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